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第22回整数論サマースクール『非可換岩澤理論』は
参加者の皆様を始め多くの方々から多大なご協力及びご支援を賜わり、
2014年9月1日に無事閉会を迎えることが出来ました。
世話人並びに講演者一同より心から御礼申し上げます。

お知らせ 2014年度整数論サマースクール『非可換岩澤理論』報告集は現在印刷中です。参加者の皆様には2016年4月以降順次報告集を配送致しますので、今暫くお待ち下さい。大変お待たせして申し訳ございません。

布留今道(ふるのいまみち)
古今和歌集 巻十七 雑歌上 870

岩澤健吉 Kenkichi Iwasawa に依る円分拡大体のイデアル類群の統一的な研究に端を発する岩澤理論 Iwasawa theory は、岩澤健吉自身の非常に独創的な研究の後に実に様々な形で一般化され、現代整数論の一大分野を形成しています。特に、岩澤理論に於ける〈代数的不変量〉である 岩澤加群 (或いはより一般に セルマー群, セルマー複体) と〈解析的不変量〉である p 進ゼータ関数 (或いは p 進 L 関数) が p 進の世界で本質的に一致する ことを主張する 岩澤主予想 Iwasawa main conjecture は、整数論の数ある予想の中でも取り分け美しく神秘的なものの一つとして現在に至るまで数多(あまた)数学者の興味を常に惹き続け、多種多様な研究へと駆り立ててきました。また、岩澤主予想は L 関数の特殊値の研究 という観点からも非常に重要なものとして位置付けられています。

そんな岩澤理論の様々な一般化の中でも特に希有(けう)ものの一つとして 《非可換化》 non-abelianisation方向性が挙げられるでしょう。2000年の半ば頃には、ほぼ同時期に John Henry Coates 等に依る 岩澤代数 (係数環) を非可換化する形での一般化と、尾﨑学 Manabu Ozaki に依る 岩澤加群 を非可換化する形での一般化という2つの異なる方向で岩澤理論の《非可換化》が提唱されました∗1)。特に前者に関しては、2010年以降 Jürgen Ritter, Alfred Weiss 並びに Mahesh Ramesh Kakde 等に依り 総実代数体の非可換岩澤主予想解決されたことで大きな展開を迎え、非可換 Brumer-Stark 予想 の様な アルティン L 関数の特殊値の研究 に応用される∗2)様々な恩恵を(もたら)しています。以上のことを(かんが)みても、非可換岩澤理論は現代の整数論の研究に於いて最早看過することが出来ない存在となりつつあることは疑うべくも無いと言えましょう。

非可換岩澤理論に於いては、《非可換》ならではの問題や困難を乗り超えるために通常の整数論ではあまり用いられない手法や概念が数多く導入されています。それ故其処(そこ)彼処(かしこ)エキゾティックな雰囲気が(かも)し出されていて研究する者を魅了して()まないのですが、一方でその外見の取り付きにくさから若干敬遠されがちであるという側面も (残念ながら) (あわ)せ持っている様に見受けられます。そこで今回のサマースクールでは 非可換岩澤理論 をテーマとして、(古典理論も含めた) 岩澤理論それ自体の面白さをお伝えすると同時に、《非可換》ならではの現象を捉えるための様々な手法や概念を紹介してみようと試みました。今回のサマースクールを通じて、通常良く見かけるものとはまた “ひと味違った” 整数論を味わうことが出来るのではないかと思います。

将来岩澤理論の研究に従事することを志していらっしゃる方、実際に岩澤理論を勉強乃至(ないし)研究してはいるけれど、何となく敷居が高く感じられて非可換岩澤理論には手が出せずにいた方、L 関数の特殊値に興味を持っていて (非可換) 岩澤理論的手法を勉強されたい方、「岩澤理論なんてこれまでやったこともないし、何だかよく分からないけど、何となく面白そう」と思われた方等、どんな方でも大歓迎です。この夏のひととき、非可換岩澤理論が織り成すちょっと変わった整数論の世界に浸ってみませんか?

※冒頭の和歌について

【歌意】陽の光はたとえ薮でさえも分け隔てなく降り注ぐので、石上(いそのかみ)すっかり荒れ古びてしまったこの里にも花が咲く (ような慶ばしい事が起こる) のだなぁ。

【注釈】2011年にドイツのミュンスター大学で行われた非可換岩澤理論ワークショップの報告集 [CSSV12] の巻頭で Coates が引用した和歌。詞書には「石上(いそのかみ)並松(なみまつ)が宮仕えもせずに石上の地に引き蘢っていたところ、突然従五位下の位冠を賜わったので、その祝いを言付ける際に詠んだ」とある。「いそのかみ」は「()る」「布留(ふる) (地名)」の枕詞であると同時に、ここでは地名を指す。

  1. ∗1) 非常に慣習的な言い回しではありますが、前者の意味での『非可換岩澤理論』を Noncommutative Iwasawa theory, 後者の意味での『非可換岩澤理論』を Non-abelian Iwasawa theory (“非アーベル岩澤理論”) と呼ぶことが多いようです。
  2. ∗2) 特に David Burns の仕事や、非可換 Brumer(-Stark) 予想への応用として Andreas Nickel の仕事が挙げられます。非可換 Brumer(-Stark) 予想に関しては、一昨年のサマースクールの報告集 [SS12] に野村次郎さんが非常に分かりやすい解説を書いていらっしゃいますので、興味のある方は是非ご参照下さい。

更新履歴

本ホームページには第22回整数論サマースクールに関する情報を随時掲載していく予定ですので、サマースクールへの参加を検討されていらっしゃる方は定期的に確認していただきますようお願いします。

更新履歴

Q & A   よくあるご質問

Q. (非可換) 岩澤理論ってそもそも何なの?

本ウェブページの冒頭言をご覧下さい。

Q. 普通の岩澤理論も知らないのに、いきなり『非可換』とか言われても………

本サマースクールの最初の方で、総実代数体の古典的岩澤主予想の解説を行いますのでご安心下さい。その際にはあまり詳細には立ち入らず、岩澤主予想を演ずる〈代数側〉の主役である岩澤加群や〈解析側〉の主役であるpゼータ関数がどのようなものか、それらを繋ぐ岩澤主予想が如何に神秘的で魅力的な予想であるかを強調して解説していただく予定です。その後、古典的な場合と比較しながら非可換岩澤主予想の定式化を勉強すると新たな発見があると思います。この機会に (古典的な場合も含め) 岩澤主予想の思想的背景を感じ取って戴ければ幸いです。

Q. 予備知識はどれくらい必要?

前半は体論 (特にガロワ理論やクンマー理論)、局所体の基礎事項 (p 進整数環、完備離散付値体等) 及び代数的整数論の基本的な知識 (総実体等の用語、大域類体論の主張等) を身につけていれば一通り (順を追って) 理解出来るプログラム編成にするつもりです。()れ等に不安がある方は事前に復習なさることをお薦めします。古典的な岩澤理論 (特に有理数体の岩澤主予想) について予習したい方は、例えば2003年度のサマースクールの報告集 [SS03] は非常に丁寧かつコンパクトに纏まっていますし、日本語で書かれていて読み易いという面でもお薦めです。また、[Bass68][Sw68] で扱われている様な古典的な代数的 K 理論についての予備知識があると、前半部の理解がより進むかもしれません。意欲的に予習に取り組みたい方は是非アフタースクールの予習問題にもチャレンジしてみて下さい!!!

世話係

第22回 (2014年度) 整数論サマースクール   『非可換岩澤理論』 | 背景画像 オリーブの木