まとめ( 調査結果と今後の展望 )
今回の研究調査の結果として、主に、以下のような知見が得られました。
まず、若者の日常生活の領域では、例えば、テレビの視聴時間は米国の方が圧 倒的に短く、また一般に、より高い学歴を取得しようとする者ほど視聴時間が短 いといった傾向がみられました。
米国と比較して、日本人の子どもたちのテレビ視聴時間の長さや、テレビ情報の 圧倒的影響度から言って、情報環境としてテレビの存在が無視できないところま で来ていることが裏付けられた結果となっています。
また、社会的意識の領域では、真珠湾攻撃に対する受け取り方に大きな相違は 見られなかったものの、原爆投下に関しては、その戦争終結に対する効果につい ての評価に日米間の大きな違いが見らました。 自国の歴史に関する興味や関心 の度合い、また自国の歴史に対する日米の教育の在り方の相違が色濃く反映した 結果となっています。
これは愛国心や社会問題に対する意識の差異としても認められます。 国歌国 旗への愛着度や自国の歴史に対する意識において、米国と比較して圧倒的に低い 日本においては、社会的問題意識が希薄であるとする、日本人の若年層に対する 従来の指摘がより明確に実証された形となっています。
日米相互の相手国に対する意識においては、それぞれの相手国の人名について の知識度に大きな差異が見られたことに象徴されているように、文化的に圧倒的 な米国の影響を受けている日本の現状と、世界を視野に入れた米国の学生の意識の差 異が顕著に抽出されました。 また同時に、日本人の若年層におけるアメリカ文 化直輸入の傾向が強く浮き彫りにされる結果となっています。
以上のような意識を持っている日米の若者が、自分たちが受けている学校教育 に対してどのような評価をしているかは、最も重要な調査項目の一つでした。
学校教育への満足度、さらにはそれぞれが受けている授業の理解度について確 認された大きな日米間相違は、日本の学校教育への重要な反省材料となり得るも のではないでしょうか。
子供たちの興味・関心を中心に理解することを教育の主軸とするアメリカの教 育風土と、受験体制に照準を合わせた日本の暗記中心で不親切な教育文化の根本 的な相違がより明確に実証できたと考えています。
この調査結果を本研究 HP上公開したのは、両国の各学校の教員がそれぞれの 教室で授業などに活用して頂くことを前提としているからです。
この調査報告が、些細ではあっても日米の相互理解のきっかけとなり、また教 育問題の反省材料として活用頂くことが、この研究の一つの目的でもあるのです。
最後に、今回の研究の問題点と今後の見通しですが、まず、調査対象における 学力レベル、社会階層などの属性規定をより明確にし、とりわけ日本側の調査対 象としていわゆる進学校の生徒を入れる努力をすることが、今後の研究には肝要 と思われます。
第二段階の研究においては、今回の調査結果分析をもとに個々の調査項目を構 造化し、とりわけ学歴意識などの教育問題を調査項目の主軸として、調査項目を 再構成していきたいと考えています。 また、インターネットを用い、研究者お よび回答者がリアルタイムで直接討議し、今後の両国の教育をどのように方向付 けたらよいかの指針を得ていくような場を設けるような試みができればと考えて います。
調査に協力して頂いた先生方、学生生徒の皆さんには、それぞれの関心に従っ てデーターを活用して頂ければと願っています。
次回の調査の時にも御協力お願いいたします。