4-4:学校教育への満足度(Q-8)
生徒や学生の持っている学校教育に対する満足度の高低は、国際比較の観点か ら教育を論じる際には根源的な問題の一つといえるでしょう。 日米の生徒・学 生の生活実態を把握し、相互に持つ文化特性の相違を念頭に置いた上で、教育に 関する調査結果を分析してみたところ、今回の調査ではいくつかの際立った日米 間の対比が見られましたが、満足度の相違はこの中で最も顕著なものの一つでし た。
米国では大半の学生が「学校教育に満足」しているのに対し、日本では3/4近 くの者が「学校教育に不満」であり、「学校教育にかなり不満」の者が1/4も存 在するといった結果が出ています。 「学校教育に大変満足」している者が逆に 全体の1/4を占める米国では、「まあ満足」を含めると9割近くが米国の学校教育 に満足しているという際だった差異が認められます。
学校教育全般に対する満足度の差異は、日米双方の社会構造や文化特性の差異 を差し引いたとしても、あまりにも極端な違いであり、日本の学校教育には致命 的な欠陥もしくは、構造的な抑圧体系があるのではないかと思わせるほどの否定 的な調査結果となっています。
英文に“quality of education”と尋ねたゆえか、成績が「上位」であるとす る者の満足度だけが68%に落ちるものの、あとは成績に関係なく9割前後の者が 学校教育に満足している米国の実態は、誠に驚くべきものではないでしょうか。
また米国のこの満足度の高さは、将来の取得学歴志望との兼ね合いでも、「高 卒」までの希望者と「大学院以上」の間に差異は全く見られません。 もっとも 「自分の能力が学校の成績に反映されていない」と強く感じている者、「カリキュ ラムは自分の目指すことに一致していない」と強く感じる者、また、「授業の内 容がよくわからない」者の間では、「学校教育に不満」との答えが当然多い結果 となっています。 しかし、全体的な数値からすると、「不満」と回答するもの は日本のそれと比較して、圧倒的に少なくなっています。
一方日本では、「成績が下位」になるにしたがって、また「自分の実力が学校 の成績に反映していない」と感じ、「授業内容が理解できない」者ほど「不満度」 は増す傾向が見られます。
高学歴を志向するほど、「不満度」が高くなるといったこの種の傾向の原因は、 日本の画一的な結果平等主義志向の教育姿勢にその根本的な問題があるのではな いでしょうか。 「かなり不満である」と回答した生徒の取得希望学歴や、自己 の成績評価に対する満足度などと掛け合わせると、この傾向は更に明確にでてい ます。
Are you satisfied with the quality of your
school education as a whole? (Japan/US)
実数大変
満足
まあ
満足
やや
不満
かなり
不満
Nihonbashi H
98
5%
39%
48%
8%
Seitoku Girl
’s H248
2%
30%
40%
29%
Tokyo Denki U
140
1%
34%
38%
28%
Japan Total
544
2%
33%
41%
23%
Northwestern H
76
9%
74%
14%
3%
Iowa City H
47
38%
51%
6%
4%
Macon St U
267
30%
61%
8%
1%
US Total
418
26%
62%
9%
2%
Are you satisfied with the quality of your
school education as a whole? (Japan/US)
日米間でほぼ同様の傾向が見られたのは、カリキュラムの有用性に対する認識 と学校教育に対する満足度との相関関係でした。 日本では「カリキュラムへの 満足度」が高ければ「不満度」は22%まで低くなっていますが、「カリキュラム に不満」であれば、「学校教育への不満度」も9割に達するという結果でした。
米国の調査結果ではこれと同様に、数値的には圧倒的に高いのですが、「カリ キュラムへの満足度」が高ければ、「学校教育への満足度」は95%となりますが、 「カリキュラムへの満足度」が低ければ、「学校教育への満足度」も31%まで下 がるといった同一の傾向が観察されます。
何が将来役に立つかを高校生や大学生が正確に判断することは難しいことでしょ うが、少なくとも本人が『役に立っている』と感じられれば「学校教育への満足 度」がそれに比例して高くなることは注目しなければならない点でしょう。 ま た、このような学生の反応は、日本の学校教育の抜本的な見直しに関する、豊か な示唆を与えているのではないでしょうか。